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「IGNIS」オーナーメカニック 池田和久

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「IGNIS」の目指すもの

「イタリア車・フランス車が
好きな方々が
自然に集まるような
場所にしたいですね。」

INTERVIEW 「IGNIS」オーナーメカニック 池田和久

「自分の仕事を持ちたい」という想いが原点

まずはこれまでの経歴を教えてください。子どもの頃から機械やクルマが好きでしたか?

父の影響が大きかったかもしれません。父は造船会社勤務のサラリーマンでしたが、20代で独立し、鉄工所を立ち上げました。その父に、小さい頃からずっと「お前もいつかは自分の仕事を持つんだぞ」と言われていて、無意識に「自分には何ができるだろう」と考えていました。中学生の頃、バイトとして父の鉄工所の手伝いをするうちに、機械いじりも好きになりました。

クルマに興味を持ったのは、兄がやっていたレーシングカートがきかっけですね。自分も高校生の時にライセンスを取り、いっしょに走っているうちに、クルマが好きになっていきました。それ以前も自転車とか、動くものが好きでしたね。

その結果、整備士の道を目指すようになったわけですね?

手に職をつけたい、クルマに関わる仕事がしたい…そう考えているうちに、自動車整備の専門学校という道を選びました。専門学校を卒業後、広島のトヨタ系のディーラーに就職します。

就職をした時は、いつかは独立するつもりだったのですか?

まだそこまで明確ではなかったですね。まずは「整備士になりたい」気持ちが先にありま した。でも父の「自分の仕事を持て」という言葉は、いつも心の片隅にあった気がします。父はその言葉に「家業を継いでほしい」という意味も込めていたみたいですが、それは後に兄が継ぎました。

仕事の基本は、すべてトヨタで学んだ

トヨタでの仕事はどうでしたか?

トヨタ系ディーラーは教育システムがしっかりしていて、仕事の基本、そのすべてを学ばせていただいたと思います。整備士がスキルアップするための社内検定や、作業手順がしっかり整備されており、さらに尊敬する先輩から、道具の大切さを教えていただく機会もありました。また、整備というと作業面だけがクローズアップされがちですが、お客様への説明の仕方など「接客」についてもしっかり身につけることができましたね。今でも、トヨタで学んだことが自分の仕事の基礎となっていると思います。

工具

道具のメンテナンスは今でも常に怠らない。そのきっかけはトヨタ時代に教わった。

4年間勤務した後、24歳の時に転職されますね。

トヨタ時代に、街で見かけるアルファロメオALFA75や、フィアット・パンダなどの輸入車が気になり、「いつか、こういったクルマに携われたらいいな」と思い始めます。そして、入社1年後にVWゴルフ(Ⅲ)GTIの中古を入手しました。あのクルマに乗ることで、すっかり輸入車が好きになりましたね。

そんな毎日を過ごしているうちに「輸入車の整備士になりたい」という気持ちが生まれてきました。そこで輸入車整備の経験を積もうと、フィアット・アルファロメオ系の輸入車ディーラーに転職しました。

VWゴルフGTI

輸入車の魅力に触れたVWゴルフGTI。96年、MINEサーキットにて。

整備に関して、国産ディーラーと輸入車ディーラーで違いはありますか?

雰囲気や作業の手順まで、かなり違いましたね。わかりやすい例で言えば、輸入車は整備用のマニュアルがないことも多いんですね。やっと見つけても英語版とか…。だから応用力はつきましたね。料理をするときに、それまではレシピ通りの料理しかつくれなかったのが、レシピなしでいきなり創作料理をつくるようなイメージですね。トヨタで基礎を学んでいたから、より応用が身に付きやすかったのかもしれません。

「パンダ専門店」も考えた独立前夜

そして30歳で「IGNIS」として独立ですね。

輸入車ディーラー時代、フィアット・パンダ(初代の中古)を購入しまして、その魅力にすっかりとりつかれました。シンプルで楽しいクルマで、今でも大好きです。だから、最初は「フィアット・パンダの専門店にしよう!」とまで思っていましたが、それではさすがに商売にならないだろうと。そこで、イタリア車・フランス車の整備をする店舗にしようと考えました。

整備の様子

「パンダ愛」は今も変わらない。初代フィアット・パンダの部品を集め、仕事の合間にコツコツとレストアすることも。

はじめての経営には、苦労もあったかと思いますが。

私は小学校の頃から新聞配達をしていまして、それが自分の「商い」のイメージの原点になっています。配達をきちんとすることはもちろんですが、集金にお伺いするなど接客的なこともやっていました。その時代に、お客様と一対一で向かい合う大切さを学んでいたので、自分が経営者になっても、その感覚を大事にしたいと。そんな気持ちで一日一日を乗り越えてきました。
ただ、苦労したのは、最初の頃は、やはりお客さんがまったく来なかったことですね。苦肉の策として駐車場に停まっているイタリア・フランス車のワイパーにチラシをはさんだりもしていました。

店内の様子

インテリアやゴルフの雑誌を用意するなど、幅広い年代の方に来店しやすい雰囲気を心がけている。

それから10年を超えて、今では広島のイタリア・フランス車オーナーの方には認知される店舗になりましたね。どんなお店を目指して来られましたか?

ずっと念頭にあった言葉が「とうもの言わざれどもしたおのずかけいを成す」、中国の歴史書からの引用です。どういう意味かと言いますと「桃や李(すもも)は何も言わないが、美しい花にひかれて人が集まり、その下には自然に道ができる」という意味ですね。つまり、イタリア車・フランス車が好きな方々が自然に集まるようなお店にしたい。そうすれば道ができるだろうと考えて毎日がんばってきました。

クルマが好きな方のご要望にきちんとした技術で応えることはもちろんですが、イタリア車・フランス車はファッション感覚で乗られる方も多い。クルマに詳しくない人でも、気おくれせずに来店できる、そんな雰囲気にしたいと常に考えています。

展示のミニカー

イタリア・フランス車のミニカーや、輸入パーツ類が飾られたキャビネットは、クルマ好きにはたまらない。

「顔が見える仕事」をずっと続けたい

お仕事をされる際に大事にしていることは?

新聞配達の頃と変わらず「顔が見える仕事」ですね。フェイス・トゥ・フェイスでお客様と向かい合う仕事をすることを心がけています。できるだけクルマの状態は丁寧に説明し、乗り方や整備の仕方のアドバイスなどもさせていただきます。オイル交換や修理の際は、可能な限りクルマをリフトアップして、お客様に整備・修理箇所を見ていただくことを心がけています。
あとは、整備という仕事柄、道具を大切にしています。「欲しいものは買うな。必要なものだけ買え」という古の格言がありますが、多少値が張っても必要となる道具や工具、設備はしっかりと揃え、そのメンテナンスにも時間を割いています。

アドバイス

長く安全に乗っていただくため、整備後には該当箇所を実際にお客様に見ていただきながらアドバイスすることも多い。

これからの「IGNIS」の目指すものは?

会社を大きくすることはあまり考えていないですね。それよりも「質」の向上です。「丁寧にお客様と向き合うこと」をこれからも変わらず目指したいですね。国産ディーラーも輸入車ディーラーも経験した自分だからこそ、それぞれの良さを併せ持ったサービスを提供していきたいですね。また、イタリア車・フランス車が好きな方々が気軽に寄っていただけるようなイベントも開催していきたいと思っています。

作業の様子

アルファロメオ、フィアット、アバルトといったイタリア車、プジョー、シトロエンなどのフランス車の最新車種にも対応できる工具や機材を揃えている。

Profile

プロフィールアイコン池田和久 Ikeda Kazuhisa

広島東洋カープの記念すべき初優勝の年、1975年に広島県福山市に生まれる。プライベートでは2児の父。趣味はゴルフ、釣り、スキーなどアウトドア大好き派。ギア好きで、道具やグッズにこだわって買い揃えている。熱烈なカープファン。好きな言葉は「好きこそものの上手なれ」。